第零章

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ダッダッダッ、と等間隔で断片的な地面を蹴る音が軽快に聞こえ、かなりのスピードで朱雀領へと近付いていた。 疾駆で草原を走り抜け、空気抵抗でびゅーっと風が頬を叩き、少し心地よかった。 いつしか俺はもう、安全エリア区域内に入ろうとしていた。 そこに入ってしまえばモンスターと遭遇することはないし、人に武器で叩かれようとダメージが減ることはない。 どうやらレアアイテムは無事に守り抜く事が出来たみたいだ。 そしてそのまま何事もなく朱雀領へと到着し、召喚獣を閉まい、街に足を踏み入れた。 オリエンス 朱雀領の中で最も栄え、広大な街であると同時にこのゲームを初めてログインした種族が朱雀のユーザーが必ずこの街にテレポートされる。 言わば始まりの街なのだ。 朱雀を種族に選んだユーザーは優に四千を超え、このオリエンスに二千五百くらいはいるだろう。 ゲームを初めて始める時、種族を朱雀、白虎、蒼龍、玄武の4つから選べるのだが、一番朱雀が人気でほぼ半分のユーザーが朱雀だ。 それぞれ種族には違うメリットが存在する。 朱雀なら魔法を使う事が出来る   白虎なら武器のオリジナルスキルを作る事が出来る 蒼龍なら小型の飛龍、召喚獣ではない野生のモンスターを従える事が出来る 玄武ならオリジナルの武器防具を作る事が出来る  それを踏まえて朱雀が人気なのは、現実世界では存在しない魔法を操る事が出来るからだ。 未知の力に興味がそそられ、不思議体験をしたいと思う気持ちの持ち主が大概朱雀を選択する。 俺もその中の一人だ。 魔法というのがどーゆーものか体験したくて興味本位で選択したのだが、今ではそれを後悔している。 初めこそ魔法をよく使っていたが、この世界に溶け込むと、魔法で敵を倒すよりも剣でズバズバ斬る方が楽しい事に気がついたのだ。 今では魔法など一切使っていない。 この世界に転生は存在しないのでかなりやってしまった、という感じがするが、それはもう諦めがつき始めていた。  
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