第零章

12/18
前へ
/20ページ
次へ
「ふぅ……」 一息ついたところで俺は人差し指を宙で振った。 目の前にメニューウィンドウである半透明の矩形が出現し、俺はアイテム欄をタッチした。 今日手に入れたレアアイテムを確認するためだ。 縦にスライドしていくと、一番下にnewと表示されたアイテムがあるのでそれをタッチする。 【復活の実】 ______同じパーティーである死亡したユーザー一人を、五分以内に使用すれば蘇生させることができる。 レアアイテムの正体は蘇生アイテムだった。 レア度5の超貴重アイテムで、店で売れば高値で買ってくれるだろう品に、俺は思わず口をあんぐり開けていた。 「何間抜けな顔してるのよっ」 「えっ!?」 突然頭上から漫ろで音色のような声が聞こえるので顔を上げると、そこには可憐な美少女が立っていた。 腰まで掛かる淡い水色の髪に、印象的な澄んだ蒼い瞳はパッチリ二重。 肌は透き通るような美白で、仮想空間とは言え、かなりの再現度だ。 ちなみに、この世界は現実世界と全く同じ姿形同じ性別だ。 理由は恐らく男女が性別を入れ替えて詐欺を起こすのを未然に防ぐためだろう。 男が女に成りすまして近づき金を騙し取るのはよくあることなので、それを未然に防ぐ処置だろう。 「セナ、お前いつからいたんだよ…」 セナ_____それが今、俺の目の前にいる彼女のユーザーネームだ。 セナとは最近、地下迷宮を俺一人で探索していた時にたまたま出会ったのだ。 たまたま彼女も一人で、これから地下迷宮を更に奥に進むとなったらソロでは攻略は難攻不落なので、お互い利害が一致し、その場限りのパーティーを組んだのだ。 それがきっかけで今もこうしてたまに待ち合わせて顔を合わせたりしている。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加