第零章

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そして、その会話を聞いた直後だった_________ 突然、どこからか女性アナウンスの声が酒場中に響いた……いや、酒場中ではない。 もっと広い範囲だ。 俺は席を立ち、酒場を出ると、アナウンスはどうやら仮想空間全体に響いているようだ。 データで仕上がった空から女性アナウンスが聞こえてくる。 『ワールド オブ ファンタジーを参加中の皆様にお伝えします。 現在ログアウトボタンの消失が確認されておりますが、これは運営側のミスではありません。』 「な、に……!?」 どーゆー事だ?ワザとログアウト出来ないようにしたとでも言うのか? 俺の思考が読まれたのか、それともこれを聞いてる他の誰かの思考が読まれたのか、女性アナウンスは俺達の疑問に答えた。 『ログアウトボタンを消失させたのは運営側の判断で行った事です。 只今からワールド オブ ファンタジーにご参加の皆様には1ヶ月______ _____1ヶ月までこの仮想空間に監禁させていただきます。』 周りの雰囲気が一気にざわめきだした。 信じられない発言に、誰しも絶句しその場で硬直してしまう。 「そんな……」 いつからか、俺の隣には青ざめた表情のセナが立ち尽くし、不安の声を漏らしていた。 セナの不安の表情は現実そっくりに形成されており、ホントにリアリティの高いアバターだった。 こんな状況の中、俺がこんな事を思えるのはもしかしたら今の女性アナウンスの発言を信じていないのかもしれない。 いや、無意識のうちに俺は拒んだのかもしれない。 ______現実逃避。 目の前で起きている現状から目を逸らす。 そう、現実の俺のように、理不尽な現実から逃れる為にこの仮想空間にダイヴし、現実から逃避した。 俺の悪い癖だ。
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