第零章

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§ 「はっ!」 俺は敵の突き攻撃を必要最低限の動きだけでかわし、一度間合いを取るため後方にバックステップした。 俺は右手に握る大剣の柄を再び握りやすい位置に持っていき、手に馴染むとカチャンと音を立てて中断の構えに入る。 敵は二足歩行する猪で、両手で鋭いロングスピアを握って乱雑に振り回している。 朱雀領を出て南下すると古の森という所がある。 そこが、今俺がいる地点でこうして猪と戦っている場所なのだが、ここはレベル上げには最適で、とくに今戦っている猪は威力はあるものの単調な攻撃パターンしか設定されておらず、効率的に狩りやすいモンスターなのだが、俺はもう既に今日だけで20体も猪を狩っている。 正確な名称を上げるならばこの猪は【オーク】 オークは鼻息を乱しながらこちらに走り寄ってロングスピアを垂直に構えて襲い掛かってきた。 このモーションは______ もう何百と同じモンスターを狩っている俺には予備のモーションを見ただけで瞬時にどーいった攻撃なのか分かってしまうので、軽々と攻撃をいなしてカウンターを隙だらけの背中にぶち込む。 右手で握られた大剣を斜め下に振り下ろし、無防備な背中に思い切り深く刻み込んだ。 「ぐぁぁぁぁおあ!!!!」 それと同時につんざく悲鳴が上げられ、オークはヨロヨロとフラつくが直後、不自然に硬直し、しばらくして体は身を完全に消滅________爆散させた。 これが、この世界の“死“だ。 この世界は仮想空間故に絶対の死はない。だが、緑色のロングバーがこの世界の生命の残量を示しており、これがゼロになれば擬似的な死が訪れる。 オークの左側に表示されている緑色のロングバー、つまりはヒットポイントがゼロになれば爆散し、完全にその姿形を消し去ってしまうのだ。 もしユーザーのヒットポイントがゼロになれば同じように爆散して死に、姿形を消し去られてしまうが、その後はセーブポイントか自身の領へと強制テレポートされる。 オークを倒した事により、俺の目の前には半透明の矩形が現れ、今回の戦闘で得られた加算経験値とドロップアイテムが表示され、俺はドロップアイテムを一括でアイテム欄に閉まってウィンドウを閉じた。
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