第零章

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ワールドオブファンタジーを始めて三週間。 俺はかなりここの住人と化していた。 それもそのはずだ。 ワールドオブファンタジーというゲームは世界初のフルダイブ技術搭載の完全感覚ゲームなのだから。 【デュアルヘルム】 それが、ワールドオブファンタジーを動かすゲームハードの名前だ。 構造は頭から顔をすっぽりと覆う流線型のヘッドギア。 従来の手で握るコントローラーとテレビなどは全く必要とせず、それだけでゲームを起動することが出来る。 デュアルヘルムの内側には無数の信号素子が埋め込まれ、それらが発生させる電界により脳に直接接続するのだ。 ユーザーは五感にダイレクトに与えられ、アクセス出来る。 デュアルヘルムのサイドに一カ所ボタンがあり、それを押せばゲームを起動させることができ、しばらくすれば目の前は暗闇に覆われる。 そして突如として視界が眩い白の光に包まれ、ぼやけた視界はやけにクリアとなる。 それを合図に澄んだ女性のアナウンスの声が直接脳に流れ込み、説明を始める。 ゲームを始めて操作する場合は始めにユーザー名を決めるのだが、俺は十和田未来(トワダミキ)なのでMikiと入力した。 その次は種族だ。 朱雀 白虎 蒼龍 玄武の4つから選択する。 ちなみに俺は朱雀にした。それが終われば遂にワールドオブファンタジーの世界にダイブすることになり、選んだ種族の領へと強制テレポートされる。 そうして物語は幕を開けるのだ デュアルヘルムは販売されてまだ間もないのでゲームソフトは一つだけだが、それで充分だった。 フルダイブという未知の領域は国民中のゲーマーをその仮想現実へと駆り立て、今ではおよそ一万人ものプレイヤーがダイブしている。
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