第1章

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ハジマリの終わり7 「ちょっと失礼する」 ミッソー中佐は天光女史に言って、携帯電話を取り上げた。 「ミッソー中佐、ご苦労だった」 電話の相手は防衛大臣の工藤大将だった。 「中佐の働きでバリ島も平穏を保っている。アルカイダを抹殺してくれたおかげだ。阿倍野総理もたいそう満足しておられるぞ」 「恐縮です。最後の掃討作戦で私が殺害したのは、わずか300人です。インド洋大津波が起きて、アルカイダのほとんどのアジトは壊滅状態に陥りましたからね。私は流されて行く彼等を機関銃で蜂の巣にしただけです。実に簡単なことでした」 「帰国したばかりで申し訳ないが、秩父へ行ってくれ。詳しい話は会った時に話す」 「了解!まもなく車で防衛省へ向います」 「対戦車ヘリAHー1Sを用意した」 「ありがとうございます」 喫茶店の窓硝子越しに、戦闘ヘリが着陸するのが見えた。 ハジマリの終わり8 翌日、ミサは始発電車に乗り込み熊谷駅から秩父鉄道に乗り換えた。 朝早いせいか、乗客はまばらでミサはボックス席の窓側に腰を降ろした。 列車が進むほどに車窓から伺える景色も秋の彩りを帯びてくる。 静かな車内に突然、携帯の着メロが鳴り響きミサは慌ててマナーモードに切り替え、メールの受信画面を開いた。 『お姉ちゃん、今ごろ電車の中かな?温泉楽しんできてね!お土産よろしく♪』妹のユキからだった。 三年前、自衛隊の内部抗争に巻き込まれた二人…殺人鬼と化したユキと、ミッソーを奪い合い、結局、永遠に失ってしまった。 その後ユキは家庭を持ち、姉妹のわだかまりはすっかり消えていたが、ミサは今だにミッソーを忘れることが出来ずにいた。 『ありがとう。楽しんでくるね』返信を済ませると、再び窓の外を眺めた。 純子を無事に連れ戻すことが出来るだろうか? 「ミッソーがいてくれたらな…」 列車は間もなく秩父駅に到着した。 byジャニス beb3bef9-3ee8-4029-a3eb-e578e3a7b02c
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