第1章

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ハジマリの終わり9 「ところで、いつまで日本にいるんだね?」 ミッソー中佐は天光女史に尋ねた。 「明日、ラスベガスへ行きます。1ヶ月の長期公演なの」 「また力を借りるかも知れない。その時はよろしく」 「いいわよ。いつでも言ってちょうだい。同級生で小学校の時の初恋の人だから、何でも聞いて上げる」 天光女史はにっこりした。 「私はこれから戦闘ヘリで防衛省へ行く。ラスベガス公演の成功を祈ってる」 ミッソー中佐は立ち上がり、天光女史と握手した。 天光女史が濡れた瞳で手を握り返したのを、ミッソー中佐は気付かない。 ミッソー中佐は恋愛感情に全く鈍感な男だった。 中佐の頭の中には命令された任務のことしかなかったのである。 命令とあれば何のためらいもなく、相手を殺害した。 完成された殺人マシーンだったのだ。 ミッソー中佐はロビーを出ると、戦闘ヘリに乗り込んだ。 戦闘ヘリは一気に急上昇して、マッハの速度で東京へ向かった。 ハジマリの終わり10 秩父駅の改札を出ると、空気は冷たく思わず身震いするほどだった。 ミサは背負っていたリュックを待合所の椅子に下ろし上着と地図を取り出した。 拡大コピーされた地図のバツ印を付けた場所に『聖ピアス教団』があるはずだ。 ミサは出発前、インターネットで教団について検索してみた。 しかし出てきたものといえば純子に渡されたパンフレット同様、詳しい活動内容などは記されておらず、だいたいの住所と電話番号を知るに留まった。 すぐにこの番号に電話をかけ友人の純子について尋ねてみたが、しばらく待たされた後、そのような人物はいないと一方的に切られてしまった。 その不自然な対応に、純子は『聖ピアス教団』にいるに違いないと確信した。 それに何か嫌な予感がしていた。 単なる思い過しなら良いのだが…。 秩父市××、ミサはこの住所だけを頼りに市営バスを乗り継ぐことにした。 byジャニス 18d07666-9db5-44a8-994e-7e19569c5d75
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