一章 契約

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★ ★ ★ ★ 家族全員にコイツの存在がバレてしまった。 父さんと地鶴姉さんには、クリスマスパーティーが終わったら詳しく事情を話す事となった。 うちでは毎年のように行われている行事で、各業界からお偉いさんやらが集まる簡単に言えば社交パーティーだ。 俺自身は、この社交はあんまり好きではない。 と言うより、嫌な思い出があるので食べ物とかそういうのには手を付けていない。 その理由は昔、パーティーの食べ物に下剤を混ぜたヤツがいるからなんだけど… 他に庭に落とし穴とか掘られたり、風呂場の壁をぶち壊したり… まぁあくまで昔の話だけど それをした張本人である、うちと同じ傘の御三家の内、雨傘家の御曹司『雨傘海』は小学校を卒業した辺りからこのパーティに参加していない。 地百合から聞いた話だと、なんだか人が変わったように暗い性格になっていたらしい。 地百合は、昔そいつの事を好きだったらしいのだけど、性格が変わってからはそいつの話を地百合から聞くことはなくなった。 俺はあんまり好きではなかったので、興味はないのだが… 「アンタの家が主催なのに、アンタはこんな目立たない所に居て良いの?」 軽く思い出に浸っていたらサラマンダーが話しかけてきた。 「別に良いんだよ俺は、長男だけど権力は一番低いし居なくても大した問題にはならない」 「権力が一番低いってなんでなの?」 「色々と複雑なんだよ…それに、目立った所に居てチヤホヤされるのはダルい」 人にモテるのは悪い気分じゃないものの、面倒くさい時もある。 特にこんな社交パーティーなんかの時は、財産目的で近づく輩もいるから尚更だ。 「それより、似合ってるなそのドレス」 何だかんだでサラマンダーもパーティーに参加する事になり、その際、地鶴姉さんがサラマンダーにドレスを着せていた。 いつも通り、社交辞令でそんな事を言ったのだが… 「って…いねえし…」 既に近くにはおらず、遠くの方でチョコレートフォンデュを食べていた。
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