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「あ」
赤井が教室の入口付近の壁にて、とんでもない光景を発見する。
「ん?」
赤井の後ろから顔を出した青井が、赤井に続いてそのとんでもない光景を発見する。
赤井と青井は無言で顔を見合わせて、輝十に視線を移すと、
「「続きはどうぞごゆっくり」」
声を揃えて言うなり、二人は教室のドアを閉めた。
「助けんか、コラァァァァァ!」
輝十は猫のように髪の毛を逆立てて叫んだ。
「ああもう! 攻撃は得意じゃないけど、しょうがねえな」
「つまり攻めがいいってこと?」
「ちげえよ!」
輝十は力の緩んだ一瞬の隙をついて、手を払いのけ、屈んで主将から体を離し、常人とは思えない素早さで背後に回って手刀で首を軽く叩いて気絶させた。
「あそこは助けろよ、おまえら!」
教室を出て、廊下で悠々と待機していた赤井と青井に向かって嘆く輝十。
「だって、輝十なら余裕でしょー」
「だよね、柔道部十人が襲ってきても逃げ切るよねー」
赤井と青井は顔を見合わせて、ねーねーと頷き合う。
「柔道部十人に襲われる状況とか考えたくねえ……」
輝十は寒気のする体をさすった。
赤井と青井の言う通り、輝十は柔道部十人程度なら余裕で難なく交わし、逃げることが出来る。
ずば抜けた身体能力――しかし交わす、避ける、逃げることに対してだけで喧嘩は決して強くはなかった。
貞操を守りきった輝十はほっと胸を撫で下ろし、乙女のような顔を……しているように見えたらしく、
「よかったね、処女守りきって」
「あ、やっぱり輝十って処女なんだ」
赤井と青井が含み笑いしながら他人事のように言う。
「処女って言うな! そこは童貞だろ!」
「あ、やっぱり輝十って童貞なんだ」
「よかったね、童貞も守りきって」
「うるせええええええ!」
顔を真っ赤にする輝十を見て、赤井と青井はにやりと嫌な笑みを浮かべ、
「「図星か」」
声を揃えて、輝十を茶化す。
「しょ、しょうがねえだろ! 彼女いないんだから!」
照れくさそうに言う輝十を見て、赤井と青井は再び顔を見合わせる。
「あれだよなー」
「あれだよねー」
その表情そのものが、そういう人種にはたまらないものであるからにして。
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