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「なんで男にモテるんだろ俺……」
輝十にとっては深刻な問題であり、大きなコンプレックスだった。
成長途中である身長は決して高い方とはいえなかったし、それに細身で童顔なのもあって、男に絶大な人気を誇っていた。
「男にっていうか、ホモに?」
「いやいや、輝十はノンケも魅了しちまうんだぜ」
遠い目をしている輝十を無視して、勝手に話を進める二人。
「俺はこんなにもおっぱいを愛しているのに……」
がっくりしている輝十の肩を赤井と青井が両側から、優しくぽんっと叩く。
「男にもおっぱいはあるしさ」
「そうだよ、もう彼女は諦めて彼氏にしたら?」
「うるせえええええ!」
げらげら笑う二人の手を払いのけ、走って逃げる二人を追いかける輝十。
赤井と青井は普段からこの調子で、だからこそ続けられる唯一の友人だった。
なんといっても性的な目で俺を見ねえ! これ重要!
やたら男に好かれることを自覚している輝十は、男友達がいないに等しく、また自ら男に近づこうとも思わなかった。
女子にモテる瞬間というのがあり、それが悲しいことに自ら男に話しかけている時など、絡んでいる時だったからだ。腐女子いいいいい!
しかしそれも今日で終わりだ。もちろん完全に終われるとは思っていないが、それでも少し気が楽になる。
「でもおまえらと離れるのはやっぱ寂しいよな」
赤井と青井は足を止めて振り返った。
「「輝十……」」
毎日学校で顔を合わせていた彼らとは別の高校に進学することが決まっている。きっと今までのように会うことも出来なくなるだろう。互いに新しい高校で友達が出来れば尚更だ。
「なに言ってんだよ、家近いんだし」
「そうだよ、遊ぼうと思えば遊べるんだし。それに……」
赤井と青井は微笑みあって、その笑みを輝十に向けた。
「高校行っても輝十なら大丈夫だって」
「うんうん、すぐ出来るよ。新しい彼氏」
「そうだよな、ありが……って、おい。新しい彼氏ってなんだよ! 新しい彼氏って!」
赤井と青井が感動のシーンに持ち込むはずがなく、二人は笑いながら再び走り出し、輝十は文句言いながら追いかけた。
この日、座覇輝十は晴れて無事に中学校を卒業したのであった。それが終わりの始まりだということに気付くことなく――。
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