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あの母性の象徴であるおっぱいというものは本当に素晴らしい。おっぱいが嫌いな男なんてこの世にはいないはずだ。巨乳派、美乳派、貧乳派……色々あるが、そんな派閥をつくること自体が馬鹿げている。おっぱいがある、それだけで素晴らしい。小さな膨らみも大きな膨らみもすべて同等に素晴らしいものなのだ。おっぱいに求められるものはその膨らみの存在であり、そこに弾力や柔らかさが加わるわけだが、それもみんな違ってみんないい。つまりおっぱいというものは、あの膨らみを見てわかるように揉む為に存在し、吸われる為に存在し、だからこ……、
「実はおまえには婚約者がいるんだ」
「…………は?」
さすがの輝十もおっぱいのことは一旦忘れ、その言葉に反応を示した。
「フィアンセがいる、と言ってるんだよ」
「何言ってんだ、親父。あれか? フィナンシェと同じ焼き菓子の類か?」
「うむ、それはフィアンセを焼き菓子のように食べたいという承諾と性的意識で間違いはないな?」
「どこをどう解釈したらそうなんだよ!」
輝十はがばっと立ち上がり、うんうんと頷いている父を見下ろして叫んだ。
あまりの突然すぎる発言に輝十は理解出来ず、また父の頭が更にアレな感じになってしまったのかと疑わずにはいられない。
「婚約者、フィアンセ、つまり許嫁ってことだ」
「……いい奈良漬け、じゃなくて?」
「俺は生憎、たくあん派なのでな」
「聞いてねえよ! つーか、どういうことなんだよ。なんだよ婚約者って!」
父は腕を組んで呻りながら悩ましい顔をする。
「うーん、なんだと言われてもな。婚約者だとしか」
「勝手に決めてんじゃねえよ……」
輝十は反論することに疲れたと言わんばかりに、その場で項垂れた。
「なんだ、好きな女でもいるのか?」
「べ、別にそういうんじゃねえよ。ただ勝手にんなこと決められて黙ってらんねえだろ! 俺は認めねえからな!」
「いいか、輝十」
地団駄を踏んで子供のように怒りを露わにする輝十に、父は子を諭すような優しい口調で。
「こういうのを“運命”というのだよ」
「てめえが勝手に決めただけだろーが! もっともっぽく言うんじゃねえよ!」
父の胸倉を掴み、上下左右に思いっきり揺らす輝十。
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