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「…………誰か、いる?」
思わず顔がひきつってしまう。
扉を10センチほど開けたところで、屋上から賑やかな声が聞こえてきたのだ。
女の声と男の声。どうやら言い合いをしているようだが、決して本気の言い合いではないだろう。声色からして兄妹レベルの喧嘩だ。
なんでここに……。
彼女にとって唯一の居場所になりえた場所には、先客がいたのである。
もちろんベンチは一つではないので気にせず屋上に出ることは可能だが、人がいる所に行こうなど絶対に思わない。
彼女は静かに扉を閉めた。
今後の昼休みもいるようなら新しい場所を見つけなければいけない。そう思うとめんどくさく、気も重かった。それでも他人と極力関わらない道を選ぶのである。
彼女は踵を返し、階段を降りていく。
灰色のスカートを揺らしながら。
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