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がりがりと耳障りな音に気づいた。
あの女はこれ以上引きずられまいと、腕を伸ばして廊下の壁に爪を立て、僕に抵抗しているのだ。
僕は腕に力を込め、強引に布を引いた。ぐうという低い蛙のような声が洩れ聞こえてきて、僕は突如肌に粟粒が生じた程の快感に襲われた。ぶるっと体を震わせる。
「――大人しく、しろ」
ふと、そんな一言が口をついた。ううと呻く声が、僕の言葉に応じる。
ぞっとする不快さに、頭の中で何かが白く弾け飛ぶ。
それからは女の一挙一動を封じるように、僕は叫び、怒鳴り、伸びてくる手を払いながら握った布を力一杯引き絞った。
その最中、いつしか自分が洩らしていた荒い息遣いが、快楽に悶えるその時のような錯覚を僕に与える。
ああ――確かに気持ちがよかった。
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