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車を走らせて三時間が経った頃、目指す場所が近くなった。
標識をちらと見て、僕は山を切り開いて出来た片道一車線の道を右へ曲がる。
車も通らない、何もないところ――何も変わらないところだなと、来る度に思う。
林と丘に囲まれた、古里という呼び方がしっくりくる雰囲気を漂わせる集落。葉も殆ど落ちてしまって寒々しい姿になった木々が続く道を進んで行くと、やがて点在する民家が見えてくる。
造りは全てが塀と生垣に囲まれ、黒い瓦を背負う年期の入った日本家屋だ。
それらが寂れた集落をいっそう淋しく暗いものにしているようで、趣があるというのも善し悪しだなと、余所者の僕は思った。
でもこの雰囲気は、好きだった。
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