揺れる枯れ枝のように

報い

　一筋の煙が薄く細く枝分かれし、やがて溶けて消える――小さな仏壇に手向けた細い線香の赤い火が、瞼の裏にちらつく。
　赤い光が暗闇に幾つも、何度も点灯するいつかの光景を思い出して、僕は両掌を合わせたままそっと唇を噛み、意識を今という時間に戻そうとした。

　冷たい雨が降っていた、あの八年前の夜の出来事は、こうして容易く僕を苛むことができる。
　今もなお肌に蘇る、濡れた服が体に張りつく不快な感触と共に。

「……」

　僕の傍らに出された湯呑み茶碗。中には薄茶色のお茶が入っていたが、それを飲む気にはなれない。

　仏壇に置かれた写真立ての中で笑う男性と子供。
　酒に酔って車を運転していた僕は、帰宅途中にこの二人の未来を……命を、奪った。