報い

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 僕は吉沢さんに向いた。  蝋でできた人形のように血の気のない顔で、僕を後ろから見つめていたのだろう。  頬に怒りや悲しみも表さない吉沢さんの、僕を見る虚ろな瞳。 「……あの……」  形だけでも長く深い沈黙を埋めたくて、何とか一言発した僕は、持参したものを上着の内ポケットから出し、飴色になった畳の上に置いて、そっと吉沢さんの膝下へ押しやった。  感情のなかった瞳が、汚物を見るかのように封筒を見下す。 「申し訳、ありませんでした」  息を詰めて、深く、頭を下げる。  この行為が、僅かであっても償いになると信じ――そう信じなければ救われない思いで、僕は三年間、同じことをしてきた。  その度に吉沢さんは何も言わずに顔を覆って泣き出し、僕はその姿をしばし見つめて暇を告げるのだ。 ――すると彼女は手を動かすことなく、 「絶対に赦さない」  震える声で、静かにそう言った。
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