16人が本棚に入れています
本棚に追加
「これから先、何年も何十年も貴方が頭を下げ続けたって」
嘲る口調の吉沢さんは声を詰まらせ、
「絶対に赦さない。貴方が金を出して謝ったくらいで、あの二人が帰ってくる筈もないのに」
くっと、唇に笑みが浮かんだ。
この女の、こんな醜い表情を初めて見る――僕は茫然としたまま立ち上がり、その場を去った。
眩暈を起こしそうな息苦しさに耐えられなくなって外に出た僕は、庭の隅で揺れる白いものに気がついた。風に揺れる服、タオル――。
衝動が、僕の胸を突く。
僕は物干し竿によろよろと駆け寄って服の一枚を手に取ると、家にとって返した。
最初のコメントを投稿しよう!