三日月は太陽の夢を見る

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「眠い、疲れた、帰りたい」 『探索早々それですか』 ≪贖罪の塔≫。 島の中央に聳え立つこの塔の内部、とあるフロアをふらふらとさ迷うアナザーが一人。 一歩進むごとにぶつぶつと弱音を呟いており、彼女の懐にしまわれたSS≪ソウルストーン≫に封されたデビル、ウヴァルが時折ぴしゃりとたしなめる。その度に少しの間は静かになるものの、結局すぐにまた弱音を呟きだすという、なんとも不毛な無限ループに陥っていた。 突き当たった分かれ道を適当に左に曲がった彼女は、そこで鈍く緑に光る小さな石を見つけた。しゃがみこんでそれを検分し、にんまりと笑う。懐からウヴァルが問い掛けた。 『透輝さん、見つけました?』 「そうそう。ようやく見つけたぜ≪魔女の証≫。とっととイーラ様んとこ戻って、献上しなくちゃねー」 よっこらせ、となんとも年寄りくさい声をあげて立ち上がった彼女は、≪魔女の証≫をポケットにしまうとまた適当に歩き出した。今回の目的はフロアの踏破ではないため、曲がった回数や方向を憶えておく必要がない。 たいそう適当に歩き回った末に行き当たった突き当たりの、その壁に近付くと薄黄色の魔方陣が浮かび上がった。 黄色は西を象徴する色。 透輝は目を閉じて、無造作に左手で魔方陣に触れる。直後、彼女は瞼を貫く程の光に包まれた。
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