三日月は太陽の夢を見る

4/8
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
イーラの城、地下闘技場。 普段は西ウィッカのアナザー達の鍛練の場として使われているそこは、今は敵味方に分かれ戦う戦場と化している。 とはいえ、そこで実際に戦闘を行っているわけではない。 アナザー達は皆、特殊な力を使ってバトルを行う。それは極論、武器など使わないただの殴り合いであっても発揮されてしまう、コントロール不可能な物だ。つまり、普通に戦ってしまうと、周囲にまでダメージを与えてしまうのである。 それを避けるために、アナザー達は≪結界≫を張ってその中でバトルを行う。 闘技場に入ってこきりと首を鳴らした透輝と反対側の出入口から、他ウィッカのアナザーが入ってくる。 (紋章からして…南の人だな) アナザーは、目につくところ―大抵は額―に、所属するウィッカを象徴する紋章を入れる。 透輝は西ウィッカに所属するため黄色い薔薇の紋章を。 対する相手アナザーは南ウィッカ所属の証、赤い百合の紋章を。 相手は、透輝を見てぺこりと頭を下げた。 「通してください…と言えば通してくれますか?」 「まさか。まずは僕を倒してからかな」 「そうですよね…。それでは、バトルしましょう」 言い終わるか終わらないか、というタイミング で、相手の紋章が輝きだす。 周りの景色がぐにゃりと歪み、一秒後には薄赤く色付いた≪結界≫内部に透輝と相手は取り込まれていた。 二人の胸元に、それぞれ所属ウィッカの色の光の粒が集まっていく。キィンと鋭い音をたてて精製されたのは、≪結界≫内部でのみ使用できる特殊な宝石≪コールストレンクス≫だった。 この宝石が砕けるとバトル敗北となる。鍛練すればそれだけ宝石の強度も上がるという、不思議な物だった。 宝石の次は、二人の全身が色付く光に包まれる。それは徐々に明確な形を取り、武器や防具へと変化した。 アナザーたちとて、普段から武器や防具を装備しているわけではない。 彼等は、バトルで使用する装備品をCSに登録する。そして、バトルの時だけそれを実体化しているのだ。 透輝は、相手の装備品を検分してみる。 (おおぅ、中々によろしい武器使ってんなあ……まあ当然だよなあ) 弱体化しているとはいえ魔女相手である。用心してし過ぎるということはまず無いだろう。 先手を取ったのは透輝だった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!