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イーラの城、地下闘技場。
普段は西ウィッカのアナザー達の鍛練の場として使われているそこは、今は敵味方に分かれ戦う戦場と化している。
とはいえ、そこで実際に戦闘を行っているわけではない。
アナザー達は皆、特殊な力を使ってバトルを行う。それは極論、武器など使わないただの殴り合いであっても発揮されてしまう、コントロール不可能な物だ。つまり、普通に戦ってしまうと、周囲にまでダメージを与えてしまうのである。
それを避けるために、アナザー達は≪結界≫を張ってその中でバトルを行う。
闘技場に入ってこきりと首を鳴らした透輝と反対側の出入口から、他ウィッカのアナザーが入ってくる。
(紋章からして…南の人だな)
アナザーは、目につくところ―大抵は額―に、所属するウィッカを象徴する紋章を入れる。
透輝は西ウィッカに所属するため黄色い薔薇の紋章を。
対する相手アナザーは南ウィッカ所属の証、赤い百合の紋章を。
相手は、透輝を見てぺこりと頭を下げた。
「通してください…と言えば通してくれますか?」
「まさか。まずは僕を倒してからかな」
「そうですよね…。それでは、バトルしましょう」
言い終わるか終わらないか、というタイミング
で、相手の紋章が輝きだす。
周りの景色がぐにゃりと歪み、一秒後には薄赤く色付いた≪結界≫内部に透輝と相手は取り込まれていた。
二人の胸元に、それぞれ所属ウィッカの色の光の粒が集まっていく。キィンと鋭い音をたてて精製されたのは、≪結界≫内部でのみ使用できる特殊な宝石≪コールストレンクス≫だった。
この宝石が砕けるとバトル敗北となる。鍛練すればそれだけ宝石の強度も上がるという、不思議な物だった。
宝石の次は、二人の全身が色付く光に包まれる。それは徐々に明確な形を取り、武器や防具へと変化した。
アナザーたちとて、普段から武器や防具を装備しているわけではない。
彼等は、バトルで使用する装備品をCSに登録する。そして、バトルの時だけそれを実体化しているのだ。
透輝は、相手の装備品を検分してみる。
(おおぅ、中々によろしい武器使ってんなあ……まあ当然だよなあ)
弱体化しているとはいえ魔女相手である。用心してし過ぎるということはまず無いだろう。
先手を取ったのは透輝だった。
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