プロローグ

7/44
前へ
/731ページ
次へ
「いやいや、おめえが帰ってどうすんだよ。おめえとやるために邪魔者追い払っただけだし」  和貴はツレの七人に顎で合図をした。  はあ。やっぱそうくるよな。マジ勘弁なんだけど。  しかしそんな思いが伝わる筈もなく、和貴は再びにやついた笑みを浮かべて言葉を続ける。 「まさか武田たちが居なかったおかげでこんな大物に会えるとはな。居なくてラッキーだったよ。今度こそ勝たせてもらうから」  和貴が言い終わる頃には他の七人も俺の周りを囲んでいた。  端(はな)から逃げられるとは思ってなかったけど、これで完全に逃げ道は塞がれたことになる。 「和貴さあ。俺一人相手に八人で勝って嬉しいの?」  返事は分かりきっているけど、一応聞いてみた。 「うるせえよ。おめえらさえ居なければ……」  和貴は言葉を切って眉間に皺を寄せると、「いい加減勝たせてもらわなきゃ気が治まらねえ。とりあえずついてこい」と言って裏路地に入っていく。  しゃあねえ。やるしかねえか。  俺は覚悟を決めて和貴の後を追った。
/731ページ

最初のコメントを投稿しよう!

947人が本棚に入れています
本棚に追加