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 少女が歩く『入口』まで伸びる一本道の上には、今まさに消えゆく命が多数転がっていた。 「うが……あ」  鎧をまとった筋肉質の男が自分の体より明らかに小さくか弱そうな少女へと右手を伸ばし、救いを求める呻き声をあげる。  男の体には、股から下の下半身がない。  引きちぎられたかのような傷口からは絶え間なく鮮血が流れ落ち、地には赤黒い液体物が溜まっていく。  もう間もなく、男の身体はその生命活動を止めるだろう。  しかし少女は呻き声をあげる男にチラリと一瞥を向けただけだった。躊躇や迷いの類いの表情を一切浮かべず、少女は足を上げ彼の上をひょい、と跨いだ。  また少女は鎧の男だけでなく、道の上に転がる屍たちの上すべてを軽い足取りで跨ぎ、歩いていく。   「……助け、て」  消え行きそうな命の中には少女が手を差し伸べれば救える命も複数あったが、それでも少女は立ち止まることも、後ろを振り返ることもしなかった。  そんな少女が、ふいに足を止める――刹那、音もなく目の前に何かが現れた。  魔物ではない。    少女の目の前に突然現れたのは、鈍い光沢を放つ銀色の金具のようなもの。  穏やかな波のような曲線を描くソレは、丁度手で掴めるほどの大きさだ。 「うわあ、ドアノブみたい」  死体を見ても表情を変えなかった少女が、目の前に現れたものを見て嬉しそうに笑った。  少女が左手で金具を掴んだ――瞬間、少女の姿は跡形もなく消えた。
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