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前後左右、天も地も全て“白”に囲まれたある空間で男は寝転んでいた。
ここでは誰の声も何の音も聞こえてこないし、狂気的な崇拝の込められた目を向けられることもなければ、嫉妬や憎悪といった醜い感情に押し潰されることもない。
この世で最も平和な世界だと男は思う。
『スーマ様』
ふいに、男……スーマの耳に聞き知る声が響いた。
けれどそれは“この空間にいる誰か”からではなく、また別の空間にいる誰かの声。
『サット?どーしたの』
少しの煩わしさを感じながらも男が声の主に続きを促す。
『あの子を……カリアをあの地に返しても良かったのですか?あんなに溺愛されてらしたのに』
『えー、何で?大丈夫大丈夫、あの地でカリアに手を出す愚か者はいないでしょ』
『そういう話ではなく……もう二度と、カリアには会えないかもしれませんよ』
『……何でそう思う』
スーマがむくりと体を起こす。
『カリアは……我々よりもヒトを選ぶかもしれません』
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