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六月。
未だ太陽が活気を見せず、ただひたすらに陰鬱とした曇天が続く梅雨の季節。 カビと気怠さだけが蔓延る時候でも、青少年に学校での授業が待ち受けているのは必然である。
それはここ、私立クルクス学園でも変わることのない常識であった。
しかし、この学園では生徒たちが湿り気と長雨に気落ちしている……と言う光景しか見られないわけではない。 むしろその逆、何らかの理由によって活気づいている──正負両方の意味で、だが──ようである。
今もまた、二人の生徒が休み時間の廊下にてその話題について語り合っていた。
「よしよし、遂にこの時期がやってきたな!」
その廊下には、グッと手を握り締め、右手にグーを作りながらなにやら意気込んでいる少年と、その様子を少し鬱陶しそうにしている少年の二人の生徒がいた。
身に纏っている服装が制服であることから、生徒であることは確実だ。
「……鬱陶しい奴だ。 良くもまぁ、こんな湿気がうざったい時に元気でいられるなお前」
「湿気がうざいって感じんのは、男のくせになげぇ髪してっからだよ!
上手く髪とか纏まらないんだろ?」
「……あぁ。 だから俺は機嫌が悪いんだ。
どのくらい機嫌が悪いのか説明すると、お前の髪をむしり取って燃やしたいくらいだな」
「……お前が言うとホントにやりそうで怖いわ……」
片や眉間にシワを寄せながら(おそらく苛立っているのだろう)不機嫌そうに告げ、それを耳に入れた受け側、つまり片方の少年は若干距離を取っていた。
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