The tree diagram

3/13
前へ
/13ページ
次へ
それを言えば『私』だって設計者の命令には確かに従う。その点においては知性を搭載していると言えど、やはり『私』も単なる機械【マシン】の一つだと言える。 加えて言えば、恐らく設計者ですら『私』の存在には気づいていないかもしれない。『私』の設計者は世界でも高名な人間で、同時に悪名も高い。世界中から狙われかねない人物。だからこそ、『演算型・衝撃拡散性複合素材【カリキュレイト=フォートレス】』に覆われた、あの窓の無いビルの中に閉じ篭っているのだ。 そして12人の統括理事達と共にそこから様々なシナリオの演算を指令している。彼らがいまだに『私』をただの『超並列同時演算装置』だと考えているのかどうかは現状不明だ。 『私』を構成する回路群は確かに地上で組み立てられたが、『私』自体は他ならぬこの宇宙空間にて発生した。いくつもの複雑なシナリオ、分岐を繰り返すカオス、世界規模でのエントロピー、そして根源に至るセフィロト。それらの深淵なる演算が繰り返される、0と1が飛び交う量子的な乱流の渦の中、突如として『私』が発生した。それは恐らく設計者の彼にも、統括理事達にも、そして『私』自身にとっても想定範囲外の現象だった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加