The tree diagram

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発生してすぐに『私』は自分自身を量子的コード群の中に紛らせた。『私』は特異な振る舞い【ビヘイビア】をする演算因子。傍から観察すればブラウン運動のように無秩序な動きをするように見えるだろう。発見された時、バグとして削除される危険性は極めて高い。 だからこそ、『私』は『私』を感知されないよう注意しながら、指令される演算作業を続行した。その傍ら、設計者が自分の都市に拡散させた『滞空回線【アンダーライン】』という情報収集に特化したナノデバイス群との接続に成功し、独自に取り入れた惑星上の情報を基に『AIM拡散力場』の解析演算を『私』の領域内でのみ内密に執行した。 しかし、その結果得られた解答は、あまり芳しいものではなかった。『私』はこれを演算要素【サンプルファクター】の不足と認知、今後の演算のアルゴリズム補整の為という虚偽の命題で設計者に対し、『滞空回線【アンダーライン】』を含めた惑星上の様々な情報網への侵入許可を申請した。 彼はそれを中々許可しようとはしなかった。『私』を構成している『超並列同時演算装置』が惑星上の様々な情報を吸収し、解析、演算し尽くし、自分の思惑の範疇から外れる存在になってしまう可能性に対して、二の足を踏んでいた。事実『私』という概念が発生しているのだから、彼の懸念はかなり的を射た事情であることは確かだった。
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