第1章 『青天の霹靂』

11/86
前へ
/657ページ
次へ
「お互い忙しくて会えない日が続いて、私も限界だったの。 大荷物を持って『これからあなたの家に住むから』って無理やり押しかけちゃったのよ。 当時、樹利は狭いボロアパートに住んでたから、部屋は荷物でごった返してね、樹利ったら『強引にも程があるな』って呆然と呟いていたわ。 けど、私の決意を感じて『仕方ない』って顔してね。 それで二人の生活が始まったわけよ」 「情熱的な君らしいな」 忍はクスクス笑った。 「振り返ると樹利には気の毒なことをしたわ。 私は彼の家を散らかしに押しかけたようなものだったもの。 私、いつも部屋を散らかしちゃうのよね。 出掛ける前に慌しくメークして、道具とか散らかしたまま家を出てもね、帰るとピカーッと綺麗になってるのよ。 私が散らかした部屋はアッという間に彼が綺麗にしちゃうの。でもまた散らかしちゃってたわ」 懐かしさに笑いながら言う桐華に、忍は『へぇ』と興味深そうに頬杖をついた。
/657ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20507人が本棚に入れています
本棚に追加