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「お互い忙しくて会えない日が続いて、私も限界だったの。
大荷物を持って『これからあなたの家に住むから』って無理やり押しかけちゃったのよ。
当時、樹利は狭いボロアパートに住んでたから、部屋は荷物でごった返してね、樹利ったら『強引にも程があるな』って呆然と呟いていたわ。
けど、私の決意を感じて『仕方ない』って顔してね。
それで二人の生活が始まったわけよ」
「情熱的な君らしいな」
忍はクスクス笑った。
「振り返ると樹利には気の毒なことをしたわ。
私は彼の家を散らかしに押しかけたようなものだったもの。
私、いつも部屋を散らかしちゃうのよね。
出掛ける前に慌しくメークして、道具とか散らかしたまま家を出てもね、帰るとピカーッと綺麗になってるのよ。
私が散らかした部屋はアッという間に彼が綺麗にしちゃうの。でもまた散らかしちゃってたわ」
懐かしさに笑いながら言う桐華に、忍は『へぇ』と興味深そうに頬杖をついた。
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