第4章 『昇 龍』

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パリスは両手でしっかりとロープを持ち、突っ張るように壁に足をつけた。 首にかかる喬の体重に、 覚悟はしていたけど、これはかなり堪えるな、 とパリスは顔を歪ませた。 ……でも上から見ていた通り、強い海風の影響でこちら側に火はまだ届いていない。 なんとかなりそうだ。 パリスは息を切らしながら、ゆっくりと下に降りた。 苦しそうに顔を歪ませるパリスに必死にしがみつきながら、喬は顔をしかめた。 『……ど、どうして、私を助けたりするの?』 低い声でそう尋ねた喬にパリスは何も答えず、ロープをしっかりとつかみながら下へと降りて行った。
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