天使の方舟<Ⅶ>

【クリスマス・イブ】

お家騒動の翌年の２月に誕生したパリスと菜摘の愛息子。

名前は真(シン)、現在10ヶ月。

シンが誕生した時にパリスと菜摘は揃って樹利に、

『どうか名付け親になって下さい』

と頭を下げた。

その申し出に樹利は『名前をつけるのは苦手だから』とか『世宝さんに申し訳ない』と渋ったものの、

『この子が誕生する前から、この子の名前は菅野家家長である樹利につけてもらいたいと思ってたから、どうかよろしくお願いします』

と頭を下げたパリスの真摯な姿勢に、渋っていた樹利も引き受けることを決め、散々迷いに迷った結果、『真』と名付けた。

真実の真摯の『真』。

日本でも中国でも通じる名前をという配慮も加わっていたりもした。

そんなシンは艶やかな黒髪に整った顔立ちと、ビックリするくらいにパリスに似ていて、パリス自身も『僕の赤ちゃんの頃の写真とまるで同じだ』と嬉しそうに言っていたくらいだ。