第1章 『青天の霹靂』

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「日本人は若く見られる上に、桐華は年齢不詳だからな。 イギリス人の目には更に若く見えているだろうね。 イギリスの生活はどうだい?」 頬杖をつきながら少し楽しげにそう尋ねた忍に、桐華は「そうね」と腕を組んだ。 「食べ物はあまり好きじゃないわ、だけどコックに日本食を作らせているから問題はないし、街の雰囲気は意外と落ち着くの。 もしかしたらパリよりも好きかもしれない。引退後はイギリス郊外に住むことも視野に入れてるくらいよ」 その言葉に忍は目を輝かせて身を乗り出した。 「イギリス郊外にうちの別荘があるよ。 『薔薇の館』と呼ばれるそれは美しい別荘でね、そこを俺達の新居にしてもいいんじゃないか?」 桐華は『やれやれ』と息をつき、肩をすくめた。 「まだそんなこと言ってたの?」 「チャンスがあれば何度でも言うよ」
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