幼馴染み

11/19
前へ
/21ページ
次へ
俺の家に到着したあやかが、息を切らしていた事があった。 「あ、歩くの速すぎるよ……」 あやかは息も絶え絶え呟いた。 俺は、誰かと一緒に来たのかな、と思い、「誰が?」と訊いた。 するとあやかは、額の汗を拭いながら、「私が」と言った。 取り敢えず俺は、オレンジジュースを振る舞った。 高校の休み時間、俺は誰かに後ろから両目を塞がれた。 柔らかい掌、後頭部にあたる胸で、女だと思った。 だーれだ? お決まりの台詞の筈が、両目を塞いだ奴はこう言った。 「あーやか?」 だーれだ、の調子で名乗るそいつに、「あやか」と無表情で答えると、手を離したあやかは「なんで分かったの?」と問いたそうに驚きの表情を浮かべていた事に、俺は驚きを禁じ得なかった。 「宝くじ買おうかなー、でも癖になりそうだし、止めとこ」っと俺がこぼした時。 あやかは、どや顔でこう言った。 「ならないよー。私十年間買ってるけど、なってないもん」 俺はその日、一生宝くじを買わないと誓った。 高三の時、休み時間にあやかの腹が盛大に鳴った。 「腹へったのか?」 と、俺が問うと、あやかは突然自分の腹をスパーンと叩いた。 その後腹が鳴る後はなく、恐らく人類で初めて腹の虫を手懐けた人間を目撃した瞬間だった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加