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俺の家に到着したあやかが、息を切らしていた事があった。
「あ、歩くの速すぎるよ……」
あやかは息も絶え絶え呟いた。
俺は、誰かと一緒に来たのかな、と思い、「誰が?」と訊いた。
するとあやかは、額の汗を拭いながら、「私が」と言った。
取り敢えず俺は、オレンジジュースを振る舞った。
高校の休み時間、俺は誰かに後ろから両目を塞がれた。
柔らかい掌、後頭部にあたる胸で、女だと思った。
だーれだ?
お決まりの台詞の筈が、両目を塞いだ奴はこう言った。
「あーやか?」
だーれだ、の調子で名乗るそいつに、「あやか」と無表情で答えると、手を離したあやかは「なんで分かったの?」と問いたそうに驚きの表情を浮かべていた事に、俺は驚きを禁じ得なかった。
「宝くじ買おうかなー、でも癖になりそうだし、止めとこ」っと俺がこぼした時。
あやかは、どや顔でこう言った。
「ならないよー。私十年間買ってるけど、なってないもん」
俺はその日、一生宝くじを買わないと誓った。
高三の時、休み時間にあやかの腹が盛大に鳴った。
「腹へったのか?」
と、俺が問うと、あやかは突然自分の腹をスパーンと叩いた。
その後腹が鳴る後はなく、恐らく人類で初めて腹の虫を手懐けた人間を目撃した瞬間だった。
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