幼馴染み

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あやかに言われて、思い出したが、あやかが記念日に指定している今日、つまり俺が初めてボランティアに参加した日、あやかと口喧嘩になった事があった。 ま、口喧嘩と言うか、俺が一方的にふっかけてしまっただけなのだがな。 あやかが空き缶を拾ったり、捨てられた犬や猫の飼い主を探したりしているのを見て、俺が堪えられなくなってしまったんだ。 「おい……、あやか、いい加減にしろ。お前いつもこんな事してるのか? ゴミ拾って、捨てられたペット拾って、いつまでそんな終わりの見えない事する気なんだ?」 あやかは、手を止めると、戸惑いの表情を浮かべて俺に問うた。 「……かずきくん? どうしたの?」 心底分からないと言わんばかりのあやかの表情に、俺はイラッときた。 そして、憤りを隠そうともせずに、俺は言い募った。 「あのな、あやか。何にでも容量ってもんがある。一人の腕は短いんだ。小さいんだ。一人の腕で、そんなに多くを守り切れないんだよ。拾い切れないんだよ。抱え切れないんだよっ。 もうこんな事、止めちまえよっ!!!」 俺は、あやかが壊れてしまわないか、心配だったんだ。 この強い女の子でも、必ず壁にぶつかる。俺は、その時が来るのを忌避したかったんだ。 そんな俺の心配を他所にあやかは、俺の言葉を受けて優しく笑んだ。 笑うなんて思ってなかった俺は、目を剥いた。 そして口汚く罵ろうとした次の瞬間、あやかは澄んだ声で言った。 「かずきくんは、優しいね。やっぱり、誘ってみて正解だったよ」 俺は訝しんだ。 幼馴染みの言葉の意味が分からなかったんだ。 「かずきくん、私の手は、人の手は、確かに小さいし、短いかもしれない。私一人で守り切れるものなんて、ほんとにちっぽけだよ」 「わかってるなら──」 「だから」 あやかは俺の言葉を遮ると、俺に手を差し伸べた。 「だから、私達は、手を繋ぐんだよ。人の手は、その為に、この形なんだよ。手を繋いだら、もっといっぱい抱えられるでしょう?」 その笑顔に、呆気にとられている俺の手を、あやかが握った。 「ほら、わかったら、手を貸してよ。かずきくん。私が辛そうになるの、いやなんでしょう?」 俺はその時、あやかの強さを再認識したんだ。 あやかは、どんな時でも自分を諦めない。だからあやかは、強いのだろうな、と思った。
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