幼馴染み

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あやかは、見ていられなかったらしい。 自分の扱いに、考え倦ねている父親を。 かつての妻しか愛せず、仕事と育児と家事を不器用にこなす父親を。 だからあやかは、高一の時に父親の元を離れる決心をしたのだ。 あやかは、強い女の子。 父親譲りで、頑固な所がある。 あやかは、意志の強い女の子なのだ。 だから、折れない。 だから、曲げない。 だから、曲がらない。 そう悟った父親は、渋々承諾したらしい。 そして、あやかは一人暮らしを始めた。 初めの頃は、何度も呼び出され、泣き言を聞かされたものだ。 嫌じゃなかったけど。 「かずきくん、かずきくん。今日が何の日か、知ってる?」 頬擦りしながら、あやかは問うた。 ……何の日か? 俺は真剣に考えた。 考えに考えた結果、その挙げ句をあやかに答えてみよう。 「……安全日?」 瞬間、あやかの頭から湯気が上がった。 「ばかあっ!」 殴られた。グーで。先ずは鼻を、そして首、鳩尾、最後に膝で股間を蹴られた。 俺は悶えながら、あやかから離れる。 止めと言わんばかりに、股間に拳を向けるあやかに、身の危険を感じたからだ。 身の危険って言うより、将来的な危機感が強かったがな。 「ばか、ばか、ばかあっ!」 離れた俺に、あやかは手を緩めず追撃。その辺にあったものを投げつけてきた。 鉛筆、枕、ティッシュの箱、雑誌、パンツ(紐)、鏡、彫刻刀、帽子、チョーク。 「何でかずきくんは、いつもそうなんだようっ! ばかっ! 今日は、かずきくんが、初めてボランティアに参加した記念すべき日だよ、ばかあっ!」 教科書、まな板、電マ、ペットボトル、人形、財布、目覚まし、靴。 手当たり次第に投げ付けるあやかの攻撃を華麗に回避しつつ、パンツと電マだけは、しっかりキャッチした。 あやかが悲鳴を上げる。 「きゃああああああ! そんなの触るなぶぁかああああああああっ!!!」 頬を朱で染めたあやかの攻撃は、更にその勢いを増した。剣山まで投げ付けてくる始末だ。 「うわっ、こら、止めろ、止めないか、あやか! いい加減にしないと、俺は女と子供には容赦しない男だぞっ!」 あやかから、更に距離を取ると、息を整えながら、第二波に備えた。
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