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(あぁ……先にも言ったが、あやつは我の力の具現体だ。簡単に一言で言うなら……人間、だな。いくら神とはいえ、そうぽんぽんと簡単に人間を創造できるわけではないが、創造神の加護を得て、使者となる人間を造り出すことができる神は数多といる。我もその一人だ。あやつは我が千早の中で眠っている間に、護衛として置いておく。強さは我の足元にも及ばないが、それでも下級悪魔なんぞには劣ることはないだろう)
人間。人間を造っただと? この世界から失われていく人達がいるというのに、人間を造ったとあっさり言い放つヴィクターに嫌悪感が沸いた。
(知識は十分にあると思うが……何分、先ほど初めて造り出したばかりだ。面倒は宜しく頼む。細かい性格などはこちらでは指定できない。あくまで力を行使した結果の産物だ。壁を殴って穴を開けるのと同じことだ。この壁をこのくらいの力で殴れば穴が開くだろう……そうは解っていても殴った結果どんな穴がどのくらい広がるかは計算し尽くせない。そういうことだ。不備があっても許せ)
窓の外を見詰めている少女は、見た目だけならば何の変哲もない普通の女の子のように思えた。ミニスカートに黒の二―ソックスという出で立ちは神の世界や時代錯誤という言葉すら忘れさせる。それなのに悪魔よりも強く、生まれたばかりだという少女。彼女は急に、くるりと身を返し、俺の前まで来ると口を開いた。
「あなたの身体は、もうあなただけのものではない。これからは常に私と行動を共にしてもらう……」
「え? あぁ……なんか大変なことになったもんな……はは、と、とりあえず自己紹介でもしようか。ヴィクターもそんなこと言ってたし……」
どうにも距離感が掴めないまま、ヴィクターにしたように俺は自己紹介を始めた。
「俺は天乃千早だ。よろしく」
「……」
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