追想

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初めて見た時は、天使だと思った。 町中の人が集まる聖堂前の広場。 私の家族も例に漏れず、祭事が始まるころには広場に入っていた。 人が多くて全く祭壇が見えないけれど、毎年の事だと諦めていたその時。 『ミーア、見てごらん』 そう言って、お父さんは私を抱き上げた。 高くなった視線の先、新年のお祭りの為に用意された祭壇に、人形のように立つ一人の女の子。 キラキラ輝く長い金の髪に、澄んだ蒼の瞳。 白い肌に、少し上気した薔薇色の頬。 裾がふわふわした真っ白なワンピースを着て、ちらちらと舞う雪の中に立つ姿はとても綺麗で、見入ってしまう。 それはもう、俺も見たいと騒ぐお兄ちゃんと、それを宥めるお母さんの声が遠くに聞こえるくらいに。 お兄ちゃんと代わるために降ろされる直前、一瞬だけ視線が合った気がして、何故だか無性にドキドキした。
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