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そんな声がして驚いて、また振り向く。
そこには肩で上下に息をする先程の女が居た。
ワンピース一枚のその姿はやっぱり寒々しい。
「・・・まだ何か用か」
「ゲートへ向かうのだろう?・・・連れていけ」
命令形で言われたその半場強制的な言葉に、思わず目を見開く。
そして逃がさない、というように真っ直ぐにこちらをみる眼差し。
「・・・私も、連れていけ」
「は、っ……ふざけんな馬鹿女、冗談も休み休みに言えよ」
「お前は私に逆らえないことを忘れたのか?」
自分の素性さえも明かさないやつを、俺がどうして連れて行かなければならないのか。
しかし、俺には時間がない。
今こうやって話している時間さえも惜しいくらいに。
そんな俺を見かねた女はけらけらと笑った。
「さぁ、どうする?」
つい先ほども聞いたその言葉は、俺に選択肢がないことを知っての問いかけなのか。
この女が何者か分からない限りは、俺はこいつに武力行使をすることはできない。
魔力や能力というものがやっかいであることは、身をもって分かっているつもりだ。
「・・・仕方ねえ、ついて来い」
「ふんっ、分かればいいのだ」
偉そうに腕を組んだまま、そんなことを口にした女に思わず拳を振り上げそうになったけど我慢だ、我慢。
今はとにかくここから逃げ出すことが最優先。こんな女は関係ない。
いざとなれば、どっかに捨てていけばいい。
歩き出した俺に、女が後ろをついてくる。
まるで子守でもしてる気分だった。
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