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「お前の目的地が何なのかは知らんが」
「いいか、俺がこれから向かうのは第6ブロックだ。秋地区へ行く」
「ふむ、こんな検問の中でゲートを通るなんて、無謀ではないのか?」
「ちゃんと聞け」
「聞いている。命令をするな」
お互いに平行を辿る為に会話にならない。
「お前がどこで死のうとも関係ない、ついてこれないなら捨てていく」
「勝手にしろ」
そしてなぜか拗ねて雪を蹴散らしながら歩いている女。
冷たい雪の中をずっと素足で歩いていたんだろう。
その足は凍傷をおこしているのか、真っ赤になっていた。
凝視していると女が俺を睨み付ける。
「おい、何だその目は」
「素足で雪の中を歩くなんて信じられねぇな」
「・・・別に構わん、放っておけ」
いや、さすがにこれは放っておけない。
もし壊死でもしたら、それこそ歩けなくなってしまう。
捨て置くといったもののやはり死んでしまわれたらこちらとしても目覚めが悪い。
それにしても靴さえも履いていないまま、逃げてきたとは。
この女、本当に謎が多い。
「お前、どこから逃げてきた?」
「関係ないと言ったはずだ」
今度は強く睨まれる。
女の着ている真白いワンピースの裾はところどころ焼け焦げ、それこそボロボロだが、使われているレースや素材から見ても、高価ものだったのだろう。
それなりの身分がなければ絹なんて着ることはできない。
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