白に染まる町

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「や、やめろ!触るな、馬鹿っ」 「だったら暴れるな!!」 雪と同じように輝く髪には、所々血が滲んでいて痛々しい。 そして、陶器のように白い肌も切り傷だらけ。来ているワンピースもボロボロ。 これじゃ、まるで俺がやったみたいだ。 強引にその女をかつぎあげてみたが、暴れるばかり。 「・・・ど、どこに連れてくんだ」 「どこか店に入る」 「つ、捕まったらどうする!!」 そう言ってまた女は俺の上で暴れ始める。 この女もやはり捕まるのは嫌なんだろう。 「・・・その怪我どうにかしないといけねぇだろ」 「こ、こんなもの平気だ!!」 女が俺の上から降りようとするから、分からせるために深く切られた傷に軽く触れてみれば、肩を震わせた。 「・・・い、っ」 「これでも、痛くないと言えるか?」 「・・・い、たい」 素直に頷いた女を確認してまた雪の上を歩き始める。 だんだん雪が吹雪いてくるのを感じ、足を早める。 唐突に口数が少なくなった女。 「・・・おい、」 「なんだ」 「お前は、名前は?」 女の目が丸く見開かれる。 そして、俺を真っ直ぐに射抜く。 強い力だった。 「・・・それは、知る必要があるのか」 低い声が耳元で俺をとらえる。 見た目からは想像もできないほどの、低くしがれた声。 まるで、獣の唸り声のようだと思った。 ―――最低限以上の探りはいらない 先ほどの女の言葉が頭をめぐる。
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