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今にも唸り声を上げながら暴れだしそうだ。
折れてしまいそうなくらいに細い手首を強く握る。
一瞬だけを女は眉を顰(ひそ)めた。
「お人よしだなんて、とんだ勘違いだった」
そう忌々しそうに一言吐き捨てる。
「今度は何が言いたいんだ」
「お前がとんでもなく嫌な奴だってことさ!」
唾でも飛んでくるんじゃないのかと思うくらいの強い言い様から、女の相当の怒りを感じられる。
驚いて少しだけ力を緩めた隙に、逃げられた。
「はっ、馬鹿め」
「それだけ元気なら歩けるな」
「え」
今度は突然か弱そうな声になる。
「こ、こんなに足が痛いんだぞ。怪我人を歩かせるのか、このろくでなし」
そしていじけはじめた。
「あぁ、もう、面倒くさい奴だな本当に!」
仕方なしに、おぶやってる体勢を整えれば、満足したような表情を見せた。
ただ単に、かつぎあげられるのが嫌だったらしい。
面倒くさくて、嫌味で、傲慢で、三拍子そろった性悪女だと思った。
「最初からそうすればいいいのだ」
「・・・店を探すぞ」
「もう少し早く歩けないのか」
「黙ってろ!」
そして遠慮することも知らない。
募り募った苛立ちを雪にぶつけるように歩く。
何の罪の雪には大変申し訳なく思う。
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