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その日俺は全てを投げ出そうとした。
雪がしんしんと降り止まぬ中を、防寒具を着込んで歩く。
深く踏み出した足が雪に絡み付いて離れない。
それでも、足を動かす。
寒さなんてものは気にならなかった。
着込んだ防寒着、深く被ったフードなどのせいではない。
ただ、胸の底から溢れ出すどうにもままならない感情が熱かった。
目の前に広がる白に、視界が狭まる。
どうにも上手く前に進めていない気分になる。
だから、冬は嫌いだ。
早くここを抜け出してしまおう。
今はまだ日にちは変わらないから。
それまでに抜け出して、どうにか準備を進めなければいけない。
そして、全てを終わりにする。
「はぁ、・・・」
思わず漏れたため息は白く。
疲れる。非常に疲れる。
雪の中を歩くのは辛いし、面倒臭い。
こんな時には、自由に飛べる奴らが羨ましい。
パッと空を見上げれば。
「・・・っくそ」
空を覆う黒光りした大きい物騒な飛行物体の群れ。
それも、恐らく何百機ときた。
もう逃げ出してきたのが勘づかれたのか、情報の伝わる早さに驚く。
コートのフードを被り直し、少し歩幅を広げ歩きを速めた。
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