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ようやくここまで逃げてきたと言うのに、今捕まってしまえば俺は殺される。
殺されるまではいかなくても、一生捕えられたままの奴隷生活か。
どちらに最悪なことには変わりないだろう
素早く連なる赤レンガの建物たちの間に身を隠す。
じっ、としていれば見つからずに済むだろうが、これでは時間がなくなってしまう。
少しでも前に進まなければ。
「35時、48分か」
ギリギリ間に合うか、間に合わないか。
危ないところだ。残り時間は12分。
0時になれば、この国にある全てのゲートが閉まる。
その時間を過ぎてしまえば、きっと検問も厳しくなるだろう。
とにかく検問が始まらないうちに、ゲートをくぐってしまえばこちらの勝ちだ。
ここは冬地区の第7ブロック。
俺の足で第7ブロックのゲートまで間に合うか。
「・・・、ゲートは2つか」
第1ブロックには、距離的にも遠いし、きっと政府の役人だらけだから却下。
となれば残るは第6ブロックへのゲートをくぐるのが良いだろう。
「……ギリギリ、間に合うか」
ここから第7ブロックと第6ブロックを繋ぐゲートへは近い。
もう少し急げば絶対に間に合う。
ズルリと壁にもたれ掛かって、ポケットに入れたままの煙草に火を付ける。
ふぅ、と煙を吐き出せば幾分か気分も落ち着いた気がした。
まだ、空はごうごうとうるさい。
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