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まだ身元割れしてないはずなのに、よくここまで追いかけてきたもんだ。
しかし、生憎そう易々と捕まるわけにはいかない。
ぐっと剣の柄を握る。
すると足音がこちらに近づいてきた。
―――上か
勢いよく顔を上げる。
そこにあった、いや―――落ちてきたのは俺の予想を遥かに上回るものだった。
ドサリと雪が重い音を立てる。
上から雪と一緒に降ってきたのはやはり人間だった。
「・・・っ」
何度見ても、それは人間であって。しかも女のガキで。
だけど雪みたいに真っ白で。
仰向けのまま、じっと虚ろな瞳で空を見つめている。
その瞳は見たこともない色だった。何というか、灰のかかった白だ。
何なんだ、こいつは。
「・・・おい、生きてるなら返事をしろ」
「・・・」
「おい、おーい・・・」
呆気なく無視された。
瞬きをしたので俺の声がちゃんと届いているはずだ。
女は体中が傷だらけだった。
まさか、こいつが、奴らに追われてたのか。
こんなちっこい、いかにも非力そうな女が?
まさか、ありえない。
そこまでの考えに至った時点で俺の思考はストップした。
女が、ちらりとこちらを見たから。
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