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交わる視線。
何故か、その瞳に何も言えなくなった。
すると、じっとこちらを見ていた女が突然何かを呟く。
「助けろ」
第一声がこれだった。
思わず絶句。命令形でそんなことを言われたのは初めてだった。
だけど女は真剣な瞳でこちらを見ていた。
しばらく口を開けたまま女を見ていたが、ハッと意識を元に戻す。
「無理だな」
女は依然と無表情なまま、俺を見ている。
「なぜだ」
「・・・お前も追われているんだろ、まぁ、気の毒だとは思うが他人を助けてやるほど」
「助けろと言っている」
「そんな余裕ねえっての、だからお前を助けてはやれない」
「嫌だ」
間髪入れずに女はそう言った、このくそ寒い中で薄着の白いワンピースの時点で可笑しいとは思ってはいたが。
どうやら頭のほうも、どうかしている。
「はっ、大体人にものを頼む態度が・・・」
「助けろ」
「無理だって言ってるだろ」
「・・・」
こんどは黙りこんだ。
視線も俯いてしまっている。
どんな我が儘な女だ、お前のせいで身元が割れて捕まるかもしれないのに。
知らない女になんて構ってられない。
俺はそこまでお人好しになれない。
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