白に染まる町

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「・・・馬鹿な奴め」 女が急に視線を上げた、そして、今度はにやりと笑った。 「な、何だよ」 「お前は、絶対私の言うことを聞くことになる」 「・・・はぁ?」 「・・・」 何を言ってるんだこいつは、とそう思いながらも逃げる準備をする。 何だか嫌な予感がする。そんなときは逃げるが勝ち・・・ 「あっちの路地だ!!」 ほら、来た。 さっきの奴らの声だ。 多分俺ではなくて、この馬鹿女を追ってきた政府の手のもの。 だから、言わんこっちゃない。 既に数歩進めていた足を止めて振り向けば女は、まだそこにいて。 仰向けになっていた体をゆっくり起こして、じっと雪の中に立って俺を見つめていた。 「・・・っ、」 多少、女が気にかかるもののもう時間もなくなりそうなので放っておくことを選択。 走り出そうと、前に踏み出したその時。 何故か引っ張られるように体が大きく揺れた。 「う、わっ・・・なんだ!?」 背中にあった剣だけが後方へ飛んでいく。 そう―――あの女の元へと。 「・・・あ、あいつ」 どういうことだ、と思いながらも振り向いて、剣を追って走る。 ふわふわと重力をなくして浮いている剣は、さっきの女の頭上にあった。 絶対にあいつが犯人だ。 それしかありえない。 魔法か能力か、何を使ったかは知らないが。 性格がねじ曲がっている。 その証拠に、女は俺を見つめながら満足気な笑みを浮かべていた。 「・・・おいくそ女!!」 「なんだ?」 「・・・返せ!!」 「はて、何のことか」 白々しく答える女、その視線の先は足音が聞こえる方。 もうかなり近くにきているようだ。 見つかるのも時間の問題。 このままじゃ2人揃って仲良く公開処刑だ。 本当に、笑えない。
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