白に染まる町

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0時、0分。 冬地区第8ブロック、路地裏にて。 ・・・ 大きな鐘の音が鳴る。 辺りは赤に染まり、真っ白な雪の情景すら台無しにしている。 死屍累々。屍の上に立っている。 そこにいたのは、俺と、女だけ。 「・・・あー、失敗だ」 「おい何だこの鐘は、うるさい」 「0時を知らせる鐘だ。・・・うるせぇのはお前だ、くそ女」 キョロキョロと辺りを見回しているだけで、滲む血には目も向けていない。 血を見慣れているのか。 やっぱり普通の女じゃない。まぁ、追われてるくらいだし、きっととんでもないことをやらかしたんだろう。 「おい、ここはどこだ」 「冬地区の第8ブロック」 「時間は」 「丁度、0時を回ったとこだ。さっき鐘が鳴ったろうが」 適当に積み上げてあったゴミ山に腰をかけて、女を見る。 「・・・ったく、何で俺がお前にそんなに詳しく説明を」 「うるさいぞ、少しは黙れないのか。」 その言葉に苛々が募るが、我慢する。 また何かされたらたまったもんじゃない。 「しかし、冬地区か。寒いな・・・」 「そんな格好してるのが悪いんだろうが」 見れば生意気すぎる態度の女は、偉そうにドラム缶に足を組んで座っていた。 寒そうに体を抱えて。 横目で見つつ、手元の時計を見る。 時間はなかったが、もう0時を回ったためにきっとゲートは閉まっている。 ゲートの閉門は一日に二回のみ。 0時になる前の15分間と、18時になる前の15分間。 つまり、あと18時間待たなければゲートは開かない。 大きなタイムロス。本当に、最悪だ。 「・・・はぁ、」 「なぁ、お前」 「・・・」 無視してみれば、また剣が浮く感覚を感じて、女を睨み付ける。 どうやら剣を人質にとられているようだ。 「無視をするな」 「何なんだよ、魔法か?能力か?」 「・・・さぁな」 「じゃあ何で追われてんだよ」 「お前は私の質問に答えろ」 恐らく、その不思議で厄介な能力のせいであろうが。 何であろうとも、その能力がとても危険なことは分かる。 しかし、まだ幼いのにそれだけで国家に追われるなんて。
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