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まだ涼しさが残るある満月の夜。
「…ま、まずいよチルノちゃん」
草原に潜む虫たちが奏でる鳴き声が響き渡る夜。
「大ちゃんは黙ってて! こんなやつ、天才のアタイだけでジューブンさ!」
そんな、ありふれたいつもの夜だった。
「………」
「ほ、ほらチルノちゃん。今だったらまだ間に合うよ!きっと許してくれるから、ね」
「やい、そこのアンタ!このさいきょーのチルノさまのナワバリを荒らすなんていい度胸じゃないか!」
「アタイの目が白いうちにはやくどっかにいきな!」
相手に威張り散らすチルノの横で「チルノちゃん、黒いうちにだよ…」と大妖精は呟くがまるで聞こうとしない。
ずっと黙って見ていた少女は特に気にする訳でもなく、口にくわえた煙草を吸いながら夜空を眺めていた。
まるで、この場に自分以外存在しないかのように……。
「―――アタイを」
その態度のせいか、はたまた自分を無視されたからか、はたまた別の理由……どちらにせよ、チルノの逆鱗に触れるには充分過ぎた。
「無視するなっ!!!」
ヒュン、っと風を切る音が聞こえた。
チルノの放った氷の礫である。
同時に大妖精の悲鳴が聞こえる。
夜空を眺めていた少女の頭に直撃したのだ。
無論、無事では済まない。
衝撃で仰け反った少女の頭からは痛々しく流血。白髪の髪を紅く染め、くわえていた煙草を濡らし、服や地面は見るに耐えない光景だ。
「う、あ…ぁ」
「そ、それくらい大したことないわよ!大げさよ、大げさ!」
大妖精は絶句、チルノも強がるも明らかに動揺している。
だが、悪夢はここから始まった。
「――ッハ」
「あっはははハハ!ハははハハははハはッ!!!」
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