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ふと、場の空気が変わった事に魔理沙は気付く。
「今思い返せば可笑しな点ばかりでした。何故巫女殿はあんなに不機嫌だったにも関わらずすぐにここを去ったのか―――」
先ほどまで自分側にいた筈のクランが何故急に中立に移ったのか。
「きっと何か……確証を得る様なものを見つけたのでしょう」
味方から語り部、傍観者へとクラスチェンジした彼は止まらない。
「そう、何故貴女は―――」
背後に圧倒的な気配を感じた魔理沙はゆっくりと静かに首を後ろへと動かす。
「壁に立て掛けた愛用の箒を放置し、隠れてしまったのか」
魔理沙は思う。 あの時のクランの言葉…
何故、『帰った』のではなく『居なくなった』と言ったのか、そして霊夢に吐き捨てた『中立の立場』という言葉。
クランが自分に手を貸した時点でそれは可笑しいのだ。 とても中立とは言えない。 では何故今彼は〝その立場″にいるのだろうか?
更に思い返す。
前者の問いがまさにそれだった。
クランは気付いていたのだ。
霊夢とクランが会話をしているその最中、彼女が箒を見つけた事を既にッ! それが『帰った』のではなく『居なくなった』の理由だったのだ。
ああ、そうか。 私は既に…
ここに来た時点で、『詰み』だったのか―――、と
全てを悟り、後ろを振り返った少女を……博麗霊夢は静かに、優しく、そっと我が子に接するように、呟いた。
――夢想封印、と
終
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