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「ここで引いちゃダメだ!」
マイケルは厳しい顔つきで、涙目のマーロンに耳打ちする。
「でも……」
マーロンは再び眼下を確かめる。
春の空はまだ青というより淡い水色だ。
しかし、強まる日差しを浴びた銀色の滑り台の坂は、まるで父親の引き出しに仕舞われたナイフの刃の様に鋭く光っている。
つい二日前、父親の留守にこっそりそのナイフを取り出して眺めていたところを見咎められ、二人ともベルトで尻を引っ叩かれた。
「このチビどもめ!」
常日頃はこの幼い双子が母親とお休みのキスを交わす時でさえ目もくれないのに、
そんな風に殴る時だけは父親は二人を固く捉えて放さない。
「あいつの腹から出てきて二人分食い扶持を増やしたかと思えば、揃って悪さばかりしやがる!」
熱した銅さながら赤黒くなった父親の形相と焼け付く様な痛みを思い出して、
マーロンは尻から背筋に震えが駆け上がるのを感じた。
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