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「こんなので死ぬわけないだろ」
マイケルは笑いながらも、白いドーナツ型の浮き輪が腰の下からずり落ちないように手で固定している。
その様子を目にすると、マーロンも釣り込まれて自分の浮き輪を押さえた。
遊園地のプールが貸し出す浮き輪は、二人のか細い腰には大き過ぎるのだ。
僕ら二人とも、まるでシュガードーナッツを付けた、スティックチョコレートみたいだ。
マーロンは自分とお揃いのオレンジの海パンを履いたマイケルを眺めて思う。
毒蛇が見たら、いいエサだと思うだろうな。
そう思うと、マーロンの肌はクランチチョコの様に粟立った。
「せっかく、夏休みで大きな滑り台のあるプールに連れて来てもらったのに」
マイケルはそう呟くと、下に向かって勢い良く手を振った。
そこで初めて、母親がいるのは階下のその方角だとマーロンは気付いた。
誰に会いたい時でも、何が欲しい時でも、マイケルの方が必ず自分より先に見つけるのだ。
「行かないなら、僕が先に飛び込むよ」
マーロンが応える前に、巨大なシュガードーナッツに挟まれたマイケルの姿は青いとぐろの向こうに飲み込まれた。
派手に水飛沫が上がったかと思うと、マイケルが再び姿を現した。
「脱出成功!」
チョコレート色の顔いっぱいに笑顔を浮かべて浮き輪を放つと、マイケルはアニメに出てくる宇宙船のキャプテンの口調で叫んだ。
「こちらは無事だ、マーロン大尉、至急、救命ボートにて脱出せよ!」
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