朱い龍

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朱い龍

あれから数日、イモリはおんみつ屋で世話になっていた。 本人は何度も八鳥の屋敷に戻ると言ったが、心太をはじめ、おんみつ屋の住人達がそれを許さない。 月乃と紗矢がかいがいしくイモリの世話をし、代わりにヤモリが店を手伝った。 身体の傷はゆっくりと癒されていく。 だが、ヤモリから見れば、静かに微笑むだけのイモリは、やはり以前とは違う。 何一つ、癒されてなどいない。 どうして隠密じゃだめなんだ。 相手の人は今どうしているんだろう。 イモリと同じように傷つき、泣いているんじゃないだろうか。 だったら一緒に生きればいい…。 ヤモリにとって、イモリは代わるもののない存在。 その彼の苦しむ様を近くで見ているのは堪え難かった。 (今夜、店が終わったら会いに行ってみようかな…) ヤモリは、布団の中から居間の小さな窓をぼんやりと眺めるイモリを見ながら、そう心に決めた。
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