導べ

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「んもうっ。本当シズさんて毎回私に突っかかってくるんですけど。どうにかなりませんかぁ、主任」 村に一つの医療機関とはいえ、お昼過ぎにはほとんどの方が受診を終えて帰られるので、12時半を回った頃にはスタッフしか残っていない。 私はいつもの如くお弁当を食べながら看護主任の室野さんにシズさんとのやり取りを愚痴混じりに報告してるトコ。 「そうね。どうもシズさんは優香ちゃんには厳しくなっちゃうみたいね」 眼鏡をくいっとあげて主任が苦しそうに笑う。 「あら。あれはシズさんの愛情表現ですよ。ね?」 いやいや。板谷さん、アナタ、本気ですか? 「ふふ。あながち間違いじゃないかもね。  シズさんからしたら、孫娘みたいでかわいいのよ」 ちょっ、主任までそういうこと言う~? 明らかに眉間にしわを寄せて、不満げな表情を浮かべる私を置いて、主任と板谷さんの会話は続いていく。 この診療所には看護師が3人いるわけなんだけど、核になってるのが主任の室野さん。50代前半の彼女は経験も豊富で、頭もよく、動きも迅速で的確という素晴らしい先輩看護師さん。 しっかりされてる分、時に彼女の前では緊張しちゃうこともあるけど、頼りになることは間違いなしの大先輩。 そして、もう一人の先輩がさっきからの的外れ発言をしてる板谷さん。実は板谷さんはすでに定年を超えてて、今はパートとして診療所に来てくれてる看護師さん。 体格が示すように大きくて温かな雰囲気の看護師さんで、今のところ彼女が怒ったり誰かの悪口を言ってるのは見たことがない。 主任は時に厳しいし、板谷さんは時にすっとぼけたコト言ってくれちゃうけど、二人とも看護師としてはもちろん人としても尊敬できる素敵な人たちで、本当にココに転職してきてよかったな、て思うんだ。 ココでは、私が私として働いていられる。 ちょっとわかりにくいけど、たぶんそんな感覚。
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